加齢に伴い起こりやすくなる、やっかいな歯周病の原因は何でしょうか?
その原因は?自分で治すことができるのでしょうか?
なりやすい生活習慣とその予防法をお知らせします。
目次
歯周病ってどんな病気?
歯周病は、プラーク(歯垢)の中の細菌が原因となって、歯周組織に炎症を起こすことによって発症します。
歯周病は、歯肉炎と歯周炎に区別されます。歯肉炎は歯周組織の炎症が骨(歯槽骨)まで及んでいない状態を指し、歯周炎は骨(歯槽骨)まで波及している状態を指します。
歯周炎にまで進行してしまうと、骨が破壊されていくため、歯がグラグラしてきます。
重度になると、歯が自然に抜けてしまうこともあります。
歯周組織
歯を支える骨のことを歯槽骨と言います。歯の根元は、歯槽骨にくっついているわけではなく、その間に歯根膜という靭帯があり、この靭帯を通して、接合しています。
歯茎と、歯の根元の境目の溝を「歯周ポケット」と呼びます。
この溝の深さが3mm以内であれば問題ありませんが、4mm以上になってくると、歯周病に罹患している可能性が出てきます。
歯周病は気づかないうちに進行している!
歯周病は、長い間かけてゆっくり進行する慢性病の一つです。
歯周病の原因菌自体は、強い病原性を示さず、急性化しにくいため自覚症状があまりないまま慢性化してしまいます。
また日々の生活習慣、嗜好品、全身のバランスなどの影響も受け、
徐々に進行していきます。
若い頃は、歯周病よりも虫歯の心配が多いと思いますが、その頃から歯周病リスクが高い環境であれば、40代〜50代頃になってから、年を重ねるごとに歯周病が進行していきます。
そして、老化に伴う全身バランスの変化により急速に進行し、歯がグラグラしたり、歯茎が腫れたりする自覚症状が少しずつ現れ始めます。
歯周病の原因
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歯周病は感染症である
お母さんのおなかの中の赤ちゃんのお口の中には、虫歯の菌や歯周病の菌は存在していません。
しかし、生まれてきてから、お母さんが口移しで食べさせたりすると、お母さんの口腔内の菌が、赤ちゃんに取り込まれてしまいます。
もし、お母さんが、虫歯の菌や歯周病菌がいれば、赤ちゃんも将来的に、虫歯や歯周病に罹患する確率が高くなります。
また、家族や夫婦間でも、歯周病の人がいれば、唾液から感染してしまう可能性があります。同じように友達の間で、コップの回し飲みなども感染源となりえます。
しかし、日頃からのブラッシングをしっかり行い、感染源を取り除くこと、定期的な歯科検診とプロフェッショナルクリーニングで予防することができるので、毎日のブラッシングケアと定期的な歯科検診を心がけましょう。
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口呼吸
唾液は、口腔内の汚れをきれいにする自浄作用があります。
しかし口呼吸により、お口の中が乾燥してしまうと、唾液の量が少なくなり、自浄作用が低下し、菌が繁殖しやすくなってしまいます。
その結果、歯周病菌を増殖させてしまいます。
口を開けたままにする癖がある場合は、口輪筋などを鍛えるように意識的に動かしたり、鼻呼吸に問題がある場合は耳鼻科を受診するなど対策を取ることが大切です。
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糖尿病などの全身疾患がある
全身疾患の中には、歯周病と関係の深い疾患があります。糖尿病もその一つです。
糖尿病は、細菌感染への抵抗力が低下し、ダメージを受けた組織の修復力が低下します。
歯周病は、細菌感染です。そして、歯周組織を破壊します。糖尿病に罹患し、容易に細菌感染してしまったり、破壊された歯周組織が治りにくい状況は、歯周病を悪化させてしまうリスクとなります。
何らかの全身疾患があれば、しっかり治療をし、全身をコントロールすることが重要です。
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歯ぎしり
歯ぎしり自体が歯周病の原因ではないですが、歯周病に罹患して、歯周組織が炎症を起こしている場合、この力がトリガーとなり、歯周病を重症化させてしまうリスクがあります。
歯ぎしりをする癖がある人は、かみ合わせを調整したり、マウスピースを作るなど、歯科医院で適切な処置を受けることをおすすめします。
歯周病になりやすい生活習慣
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歯磨きをしない
食べ物の残渣から作られるプラークは、歯の表面に付着して、2〜3日で歯茎に炎症を起こします。
この時点で歯磨きを行い、プラークを取り除くことができれば、歯茎の炎症は改善していきます。
しかし、歯磨きをせずに放置すると、さらに炎症は歯槽骨や歯根膜に波及します。そして歯周病が進行してくると
歯がグラグラしてきてしまいます。
特に寝る前の歯磨きは最も大事です。寝ている間は唾液の量が減り、口腔内の最近が増えやすくなります。
日中忙しくてなかなか時間をかけて磨けない場合も、夜だけでも丁寧に磨くようにしましょう。
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喫煙習慣
タバコを吸うと、全身の毛細血管が収縮します。これは歯ぐきについても同じです。
毛細血管が縮むと血行が悪くなってしまいます。歯ぐきは血液を介して栄養や酸素を受け散っています。
また、細菌と戦う白血球なども、血管から運ばれてきます。
タバコにより血管が収縮すると、これらのものが運ばれる血流が悪くなるため、歯周病を悪化させる要因になります。
歯周病を予防する生活習慣
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歯磨き
毎食後が理想的ですが、どうしてもできない時は、夜だけでもしっかり丁寧に磨きましょう。
唾液の少ない夜にお口の中の菌は繁殖します。
歯ブラシだけでは、隅々の汚れが落ちにくいため、歯間ブラシやフロスの併用をしましょう。
よく磨けているか調べる方法として、薬局などで売っている染め出し液を使うのも良い方法です。
一度しっかり歯科医院で衛生士さんにブラッシング指導を受けると、さらに安心です。
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歯磨き粉
歯周病対策に効く歯磨き粉には、歯周病菌を殺菌する作用や、歯茎の炎症を抑えたりする成分が含まれています。
できれば長くしっかり磨けるように、低発泡性のものを選ぶと良いでしょう。
さらに、歯周病菌に対する殺菌作用、歯茎に対する抗炎症作用のあるうがい薬(デンタルリンス)を使うと効果が高まります。
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歯茎のマッサージ
歯茎の血行を良くすると、細菌に抵抗する白血球が運ばれやすくなります。
歯磨きの後、指で歯肉のマッサージを行うのも良いでしょう。
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サプリメント
最近は歯科治療にもサプリメントが取り入れられています。
お口の中のカンジダ菌を減らす効果のある乳酸菌や、歯茎の毛細血管の血行を良くするビタミンEを摂ることも効果が期待できそうです。
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定期的なメンテナンス
歯周病ケアの一番大切なことは、日々の歯磨きによるプラークコントロールが基本ですが、一人では限界があります。
歯石は専用の器具でなければ取り切ることはできませんし、歯周ポケットが深くなってしまった場合は、歯磨きだけでは汚れが取れない場合もあります。
定期的に歯科医院に通うことで、良好なお口の中の環境を保つことができます。
「歯周内科」という治療
最近は「歯周内科」という治療を取り入れている歯科医院も増えています。
お口の中のプラークを採取し、位相差顕微鏡で、どのような菌がいるか、肉眼で確認します。
もし、歯周病菌の活動性が高く、量もたくさんいるようなら、除菌できる薬剤を使って菌を減らす治療です。
そして、菌が減ったのを確認して、クリーニングをしていく方法です。
まとめ
歯周病は、慢性の疾患であり、感染症でもあります。痛みがなく気づかないうちに進行してしまいます。
日頃から、歯磨きをしっかり行い、定期的なメインテナンスで、進行を予防することができます。