ガックという果物はご存知でしょうか?
ガックはリコピン等のカロテノイド類を豊富に含んでいる事から、美容業界のみならず医療の現場でも注目をされているスーパーフルーツです。
ガックの母国、ベトナムでは栄養失調の国民がガックに救われた歴史から「天国からの果実」という呼び名が付けられています。
目次
ガックはどんな果実?
ガックは、ベトナムなど東南アジアを中心に見られるツル植物で、大きさはメロンと同じくらいです。
ベトナムの田舎の方に行くと電信柱や民家の軒下などに生息しており、国民にとって、とても身近な植物である事がわかります。
ガックは12月~1月に実が熟して収穫されます。
半分に切ると外側に黄色い実の部分があって、中央には真っ赤な仮種皮(かしゅひ:種を覆っている柔らかい皮)に覆われた種が詰まっています。
主にこの仮種皮の部分に高濃度のリコピンを筆頭としたカロテノイド類が含まれており、仮種皮を油に溶かして作ったガックオイルを料理に使ったり、ジュースにしてそのまま飲んだりする事ができます。黄色い実の部分はビタミンCが豊富で、薬の代わりに使われる事が多いです。
他にはお正月などの祝い事にガックの仮種皮で着色したソーイ・ガックという赤飯にしたり、おもちに練りこんだりして食されています。
強烈な赤色からは想像できないほど、意外にも味に強いクセがなく色々な食材と相性が良いそうです。
リコピンのコクと、ほんのりと甘いガックの風味を楽しむことができます。
ガックが世界に知れ渡ったきっかけ
実はこのガックは、欧米の最先端医療の研究現場では有名なフルーツです。
有名になったきっかけは、1990年代よりも前の、発展途上国の子供たちの深刻なビタミンA欠乏症でした。
当時の発展途上国の子供達は、ビタミンA欠乏症のせいで免疫が弱まり、ハシカやマラリアや下痢といった、普通の病気で亡くなってしまう可能性が25%も高かったといいます。
ガックの産地であるベトナムも、当時はこの例外ではありませんでした。
政府はビタミン剤を配布するという対策を行いましたが、地方の農村など、欠乏症が深刻な地域には行き渡っていませんでした。
この地方の窮地を救ったのが、ベトナム政府が援助を要請したアメリカの医学研究機関です。
アメリカの医学研究者達は、地方の人々が将来的に自分達で栄養を補給できるようにする為、彼らの身近にある植物からビタミンを補えるものがないか探し出しました。
そこで注目されたのがガックです。
ガックは栄養価こそ高いものの、普通の果物のように皮をむいたらすぐ食べられるような手軽な果実ではありません。
そこでアメリカの医学研究機関が、栄養価の高い部分の取り出し方、有効な調理方法、保存方法を研究してベトナムの人々に広めました。
次第にビタミンA欠乏症は改善され、多くの子供達がガックに命を救われたと言います。
ガックはその栄養価の高さから、医療・美容業界から多大な期待をされており、今も研究が続けられています。
ガックのカロテノイド
ガックが栄養学的に注目をされているのは驚異的な数値のカロテノイド類を含んでいるからです。
カロテノイドは、赤色や黄色の植物の色素のことで、油に溶けやすいという油溶性という性質を持ちます。
体内でビタミンAに変換されるβカロテンや、トマトに含まれている事で有名なリコピンもカロテノイドの一種です。
これらは高い抗酸化作用を持ち、健康効果が非常に高いと言われています。
ガックが含む主要なカロテノイドは以下のとおりです。
βカロチン
βカロチンはビタミンAの前駆体で、プロビタミンAとも言われます。
体に取り入れると必要な量だけビタミンAに変換されます。
最近の研究では、他のカロテノイド類を体の必要な箇所に運ぶという役割もあることが分かってきました。
ガックにはにんじんの2倍のβカロチンが含まれています。
リコピン
リコピンはビタミンやミネラルに属さないフィトケミカルという栄養素に分類されます。
フィトケミカルとは植物の味や匂いや色素を作っている栄養素で、ビタミン類よりも高い抗酸化作用がある栄養素です。
リコピンはカロテノイド類の中でも、最も優れた抗酸化作用をもつフィトケミカルの一種として、美容への効果はもとより、ガン治療の効果も期待されている栄養素です。
ガックにはトマトの70倍以上のリコピンが含まれています。
ゼアキサンチン
ゼアキサンチンもまたフィトケミカルの一種です。
体内では目の黄斑部に多く存在しており、目の健康に深い関わりがあることが分かっています。
黄斑膜とは眼球の内側にある光を吸収する膜の事を指します。
ゼアキサンチンは、ルテインというカロテノイドと協力して黄斑膜の中心部分を光のダメージから守っています。
b-クリプトキサンチン
b-クリプトキサンチンもまたフィトケミカルの一種です。
血糖値を正常に保つ働きや、骨代謝が正常に行われるようにする作用を持っています。
骨粗しょう症や糖尿病の予防効果を期待されています。
カロテノイド同士の相乗効果
ガックには他にも亜鉛やビタミンCなどを豊富に含んでいますが、注目されているのは含有量の多さだけではありません。
カロテノイド類のバランスが良い
カロテノイド類の中には単体で摂りすぎると逆に病気のリスクが上がるものもあります。
それぞれのカロテノイドには各々の役割があり、互いに効率良く働けるように助け合っています。
カロテノイド類は複数をバランス良く摂ることが大切です。その点、ガックは理に適っていると言えます。
吸収効率が良い
カロテノイド類は油と一緒にとると吸収効率が上がります。
ガックには天然の不飽和脂肪酸が適量含まれおり、その不飽和脂肪酸がガック自身が持っているカロテノイド類の吸収や働きを助けているのです。
不飽和脂肪酸とは
常温で固まらず、さらさらとしている質の良い脂肪酸です。
体内に入るとドロドロとした飽和脂肪酸と入れ替わって体内の脂質の質を上げてくれます。
脂溶性の栄養素の吸収も助けます。
飽和脂肪酸よりも酸化しやすいため、抗酸化ビタミンであるビタミンEと共に摂取するのが望ましいと言われています。
3つの病気に対する効果
ガックに豊富に含まれているカロテノイドは、今尚、医療現場で臨床実験などの研究が進められています。
カロテノイド類が治療や改善に役立つと言われている、代表的な3つの病気について記載します。
白内障の予防・改善
白内障は目の黄斑部と呼ばれる光のダメージを最も受けやすい場所が加齢や活性酸素によって変質してしまうことが原因で起こります。
ガックは以下の点から眼の健康の為の栄養素が揃っているとして白内障の予防効果を期待されています。
- 光が集中する黄斑部には、ゼアキサンチンが集中して存在しており、眼を光のダメージから守っています。ゼアキサンチンが不足すると黄斑部の劣化が早まり、白内障のリスクが上がってしまいます。
- リコピンもまた眼球に存在し、眼の全体をダメージから守ることでゼアキサンチンの働きを助けています。
- βカロテンは他のカロテノイドを運搬する上で重要な役割を担います。βカロチンをゼアキサンチンと一緒に摂取することで、カロテノイド全体の吸収効率が上がります。
ガックにはこの白内障予防に必要なカロテノイド類が高濃度で含まれており、白内障の予防・改善に有効であると言われています。
眼とカロテノイドに深い関係性があるとして今も研究が進められています。
現段階では血中のカロテノイド濃度が高い人は、そうでない人に比べて白内障になるリスクを大幅に減らせる可能性があることが分かってきています。
パソコンや携帯電話の普及によって、眼へのダメージが増え、現代人は潜在的なカロテノイド不足に陥っていると言われています。
白内障といえば、年配の方の病気というイメージが強いかと思いますが、今は30代の発病も増えています。
心当たりのある方は今からでも食生活でしっかりと眼のケアをしていきましょう。
1型アレルギーの予防・改善
免疫とは本来、体を守るための自己防衛システムです。
ウィルスや菌を退治する指令を出す「Th1細胞」と、埃や花粉に対して働きかける「Th2細胞」がバランスを取り合う事で、免疫は正常に働いています。
これを「Th1/Th2バランス」と言います。
このバランスが崩れてTh2細胞が過剰になってしまうと1型アレルギーが発症します。
リコピンやβカロチンには「Th1/Th2バランス」を整え、アレルギー症状を軽減する作用がある事がわかりました。
実際にハウスダストアレルギーと花粉症の人をそれぞれ対象とした臨床実験も行われており、早い人では臨床検査を始めてから一ヶ月後にアレルギー反応が陰性になったという結果があります。
元々の生活習慣やアレルギーの度合いによって結果は異なる為、自覚症状の改善を実感できるようになるには、半年~1年かかる方もいるそうです。
体質改善に大切なのは継続的に摂る事だと言われています。
ガン予防・改善
ガンは細胞が活性酸素に攻撃されることにより細胞が変質することで、発症するということが近年の研究で分かってきています。
遺伝的な要因もありますが、食生活の改善で予防できる部分も大きいとされています。
ガンの予防には下記の2点が大切です。
- 抗酸化作用の高い食品を摂って活性酸素の攻撃を防ぐ
- 活性酸素が発生しやすい生活習慣を控える
※活性酸素が発生しやすい生活習慣とは、喫煙、飲酒、ストレス、睡眠不足、過激な運動などです。
リコピンを豊富に含むカロテノイド類を継続的に摂取することで、体内に蓄積するカロテノイド類の量が増え、その部位のがん細胞が増えないように保護している事が分かってきました。
- 眼
- 肝臓
- 肺
- 乳房
- 卵巣
- 前立腺
- 大腸
- 皮膚
に蓄積量が多い事が確認されており、体全体のガン予防に効果的であると言われています。
また、ガンを予防するための生活習慣は、動脈硬化からなる生活習慣病の予防にもなります。
病気になりそうになってから焦っても間に合わないかもしれません。
毎日の健康な習慣の積み重ねが大切だと言えるでしょう。
大切なのは継続的に摂ること
カロテノイド類は継続的に摂るのが大切です。
継続摂取によって、少しずつ体内に蓄積する量が増えていき、徐々に体質を改善していってくれます。
のこれらの病気とカロテノイドの関連性の研究が進むことによって、近い将来、完治できる病気が大幅に増えてくるでしょう。
ガックは日本気候では育てるのが難しく、日本では果実が手に入りづらいという現状があります。
近頃は健康に対する関心が高まりつつあり、ガックのサプリメントも出てきているのでサプリメントで摂るのもオススメです。
サプリメントは作る工程で熱が加わるため失われる栄養素もあると言われますが、ガックに含まれているカロテノイド類は熱に強いので、その心配もありません。
まとめ
カロテノイド類が治療に有効と言われる代表的な病気を3つ挙げましたが、ガックに豊富に含まれているリコピンには、他にも、アンチエイジング、美白、生活習慣病の予防に有効的であると言われています。
健康は美容に直結します。
ガックは美容に関心が高い方にもオススメできる食品です。
食生活で時間を掛けて作った健康な体は、病気じゃないけどなんだか体調が良くないといった「未病」の症状の改善にもなり、風邪も引きづらくなり毎日を有意義に過ごす事にも繋がります。
健康に関する知識を持つことも大切ですが、もっと大切なのは実際に食生活を変えることです。
関心がある方はまず摂ってみて、少しずつ健康的な変化を楽しむのも良いかと思います。
少しでも、この記事を読んで下さった方の美容・健康のお役に立つ事ができたなら幸いです。